自動車走行データで
危険を見える化
行政、地域住民と実現した
安全・安心な町づくり

損害保険会社の仕事は、事故が起きた後に保険金を支払うことだけではない。
日々得られる、ドライバーたちの​走行​データを使い、事故が起きる前に危険を発見。
地域の交通安全対策につなげることもできる。

あいおいニッセイ同和損保(以下、AD社)は、福井県・福井県警察と連携し、県内のドライバーに専用車載器を配布。
急減速が起きた場所と、実際の交通事故発生現場を一枚の地図に重ねた。
それによって可視化されたのは、事故が起きた場所だけではなく、事故に至らなかった「危険の兆し」だった。
損害保険会社が持つデータを活用した、地域の安全・安心を守る地方創生プロジェクトを追う。

  • Chapter 01

    模索から始まった
    地方創生プロジェクト

    AD社の強みであるリスク知見や技術、地域ネットワークを国の施策と融合。福井県との連携では、同社独自のテレマティクス自動車保険で収集した走行データを活用する新たな挑戦が始動した。

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    模索から始まった地方創生プロジェクト
    Chapter 02

    データの活用により、
    事故が起きる前の危険を
    見える化

    急減速などの走行データを分析して事故の危険がある場所をまとめた「福井県交通安全マップ」を作成。交通事故を未然に防止するため、行政や住民の話し合いに使う共通の土台を作り上げた。

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    データで事故が起きる前の危険を見える化
    Chapter 03

    机上のデータだけではなく、
    現場の真実を見つめる

    分析チームは自ら現場に足を運び、データでは見えない現地のリアルな感覚を確認しながら検証を重ねた。自治体と課題意識を共有し、中立な表現に徹する。愚直な作業の積み重ねが、行政の判断を支える信頼性の高い情報を生み出した。

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    机上のデータだけではなく、現場の真実を見つめる
    Chapter 04

    社会課題の解決を、
    継続可能なビジネスへ

    成果は安全対策や教育に結びつき、内閣総理大臣賞を受賞。データを地域に還元し、事故予防と事業成長を両立させるビジネスモデルを確立させた。損害保険会社の役割を、補償から課題解決へと広げる挑戦は、全国へ続く。

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    社会課題の解決を、継続可能なビジネスへ

Introduction

テレマティクス×官民連携で、
福井の交通安全を変える

2016年、AD社は全社横断の地方創生プロジェクトを立ち上げた。以来、自治体との連携協定を起点に、保険会社が持つリスクマネジメントの知見やサービスを地域課題の解決に生かしてきた。

中でも福井県では、県内の運転挙動データを収集し、急減速などのデータと交通事故発生地点を重ねて、「福井県交通安全マップ」を作成。これが交通安全施策や通学路の学習に活用され、福井市明新地区の「ゾーン30」指定も後押し。そしてこの取り組みは令和4年度「冬のDigi田(デジでん)甲子園」で優勝し、2023年3月に内閣総理大臣賞を受賞した。
※ゾーン30:歩行者や自転車が多い生活道路の一帯で、最高速度を時速30キロ以下に定める交通安全対策。

テレマティクス×官民連携で、福井の交通安全を変える

Member

  • 河合 亮介
    福井支店
    支店長

    河合 亮介

    福井県との取り組み当時は、マーケット開発部地方創生戦略室長。福井県知事への提案やDigi田甲子園へのエントリーなど、全体推進を担った。

  • 斉藤 悠記
    デジタルビジネスデザイン部
    DX支援グループ
    グループ長

    斉藤 悠記

    2016年の地方創生プロジェクト立ち上げ時から参画。福井県案件では企画、現場連携、分析結果の解釈やレポート作成支援に携わった。

  • 松尾 祥平
    デジタルビジネスデザイン部
    データソリューショングループ
    主任スペシャリスト

    松尾 祥平

    テレマティクスデータの分析とレポート作成を補佐。データと現地の実態を照合し、施策につながる分析を追求した。

  • 鈴木 毅
    マーケット開発部
    地方創生戦略グループ
    グループ長

    鈴木 毅

    地方創生の全社戦略と全国展開を推進。福井県の成果を各地の課題解決へ生かす仕組みづくりを担う。

  • 針木 梢
    マーケット開発部
    地方創生戦略グループ

    針木 梢

    営業店で自治体提案や地方創生施策を推進した経験を持つ。現場と本社、自治体、代理店をつなぐ立場から展開を支える。

Chapter 1

模索から始まった地方創生プロジェクト

  • 国が地方創生政策(まち・ひと・しごと創生)を推し進めていた2016年4月。AD社は全社を挙げて取り組むプロジェクトの一つとして「地方創生プロジェクト」を開始した。目的は、地方自治体との連携に基づく地域課題の解決を通じたマーケット拡大だった。保険会社は、交通事故や自然災害、企業経営など、地域が抱えるさまざまな課題と日々向き合っている。さらに、全国の営業店や代理店を通じて、自治体や地域企業との接点も持つ。地方創生に目を向けたのも、ビジネスの一環として必然だった。

    プロジェクト開始当初は、自治体との連携を通じて地域課題の解決に取り組むという大きな方向性だけが決まっていた。立ち上げ時から携わる斉藤も「本当に『何をやろうか』というところから始まりました。」と振り返る。

    模索から始まった地方創生プロジェクト
  • 土台になったのは、保険会社が本業で培ってきたものだった。AD社は、交通事故や自然災害、企業経営で起こり得る損失を予測し、被害を防ぐための知識やサービスを持つ。こうした仕事をリスクマネジメントという。これらの知識・技術・データと地域とのつながりを地方創生に持ち込んだ。

    福井県とのプロジェクトもその一つだ。目を付けたのは、車が走った場所や速度の変化、急減速などを車載器と通信で記録する技術。その走行データは、地球約1,035万周分にも及ぶ(2026年3月末時点)。この膨大なデータを活用し、福井県・福井県警察との連携のもと、新たな交通安全対策を形にしていったのだ。

  • 斉藤 悠記
    斉藤 悠記

    「自治体との対話を重ねながら、当社が持つものを地域の課題解決にどう結びつけるかを考えていきました。それらを自治体向けの提案パッケージにして、一緒に地域課題の解決に取り組みませんか、という活動を全国の営業店で開始しました。」

Chapter 2

データの活用により、事故が起きる前の危険を
見える化

  • 従来の交通安全対策は、講習会などの啓発活動や、実際に事故が起きた地点への対応が中心だった。住民から寄せられる要望を手がかりに事故を防ぐこともできるが、まだ事故が起きていない場所の危険を捉え、どこから優先して対策すべきかを、客観的に判断する材料は限られていた。

    そこで活用したのが、AD社のテレマティクス技術である。福井市明新地区周辺では、2021年10月から2022年1月にかけて、県内ドライバー454人に専用車載器を配布し、急減速の位置や時刻など運転データを取得。警察庁が公開する交通事故発生地点と重ね、「福井県交通安全マップ」を作成した。

    データで事故が起きる前の危険を見える化
  • 交通事故の記録が示すのは、すでに事故が起きた場所である。一方、運転データからは、事故には至らなかったものの、ドライバーが危険を感じて回避行動を取った場所がわかる。

    事故件数がゼロでも、多くの車が急ブレーキを踏んでいる交差点なら、安全とは言い切れない。データを分析していくことで、これまで見過ごされていた危険な場所を発見できるようになった。

    こうして作成されたマップは、分析結果を示すだけのレポートではなかった。AD社のメンバーは、自治体が何を課題とし、どのような判断にデータを使いたいのかを整理。その上で、どこから優先して対策すべきかを考えられるよう、マップという形で示した。行政や警察、学校、地域住民は、同じ地図を見ながら、危険な場所と必要な対策を検討できる。データを集める技術だけでなく、その意味を読み解き、次の行動につなげる提案まで一体で届けることで、交通安全マップは事故を未然に防ぐためのツールとなった。

    データで事故が起きる前の危険を見える化

    「自治体の交通安全の取り組みは、講習会などがほとんどでした。そこにデータが使えることは、従来の取り組みと一線を画すものだったと思います。」と斉藤は語る。

    この提案が受け入れられた背景には、自治体の課題に合わせてデータの使い方まで示したことに加え、新規性、さらには技術への安心感もあった。使われたのは実証実験段階の技術ではなく、すでにAD社のテレマティクス自動車保険で多くの契約者に提供されていた仕組みである。実績のある技術を、地域の課題に応じた提案へ落とし込んだことが、行政や警察にとっての受け入れやすさにつながった。

  • 「通常の交通量調査では、その瞬間の状況しかわかりません。一方、私たちが収集する運転データなら過去にさかのぼり、交通施策を実施した前後で比較できます。取り組みに効果があったかまで見られる点を、とても価値のあるデータだと評価していただきました。」

    河合 亮介
    河合 亮介

Chapter 3

机上のデータだけではなく、
現場の真実を見つめる

  • データ分析というと、机上での分析作業を想像するだろう。しかし、このプロジェクトでは、データだけでは危険地点を決めなかった。急減速が多いという事実だけでは、なぜそこでブレーキが踏まれたのかまではわからない。そこで分析チームは、地域の人の実感と一致するかを確かめ、必要に応じて現地へ足を運んだ。データとその地域で暮らす人々の実感と、データ分析の結果を照らし合わせながら、初めて行政の判断に使える情報に仕上げていった。

    まず分析結果を自治体や地域に詳しい人へ示し、日ごろ感じている危険と一致するか聞いた。同じ手法を埼玉県で用いた際には、福井にも携わった分析メンバーが、データ上で危険とされた交差点まで自転車で向かい、道路の状況を自分の目で確かめた。福井でも、データをもとに対策された場所を訪れ、現地の状況と分析結果が合うか確認した。

    「地域の方が感じていた危険を、データで裏付ける作業です。」と、分析業務に携わった松尾は話す。

    机上のデータだけではなく、現場の真実を見つめる
  • 分析の前には、自治体が何に困り、何を判断するためにデータを使うのかを話し合う。そのうえで、使うデータ、比べる項目、作成する地図や
    レポートを決める。これが分析の設計図に当たる分析仕様である。こうして、それぞれの考えるプロジェクトのゴールをそろえてから、作業を始めた。

    分析結果の見せ方にも注意が必要だった。地図の色やグラフの表示方法によって、危険性や対策の効果が実際以上に強く見えることがある。期待される結論に寄せず、データが示す範囲をそのまま伝える。その積み重ねが、行政の正しい判断材料になる。

  • 松尾 祥平
    松尾 祥平

    「分析結果が次のアクションにつながらなければ、意味がありません。複雑な手法を使うことよりも、相手が解釈しやすく、対策を考えられる形で示すことを大切にしました。」

Chapter 4

社会課題の解決を、継続可能なビジネスへ

  • 「福井県交通安全マップ」は、危険地点を知らせるだけでなく、実際の交通施策にも使われた。福井市明新地区で歩行者や自転車の多い生活道路での交通安全のため最高速度を時速30キロ以下に規制する「ゾーン30」を指定する際の検討材料となり、さらに、指定後には走行速度を比較し、明新小学校周辺で車のスピードが低下したこともデータで確認できた。

    地域の小中学生もマップを使い、通学路の危険箇所を調べ、対策を考える学習に取り組んだ。交通安全を学ぶだけでなく、データから地域課題を考える機会にもなった。こうした取り組みはデジタル技術を活用して地域課題の解決に取り組む優れた事例を表彰する令和4年度「冬のDigi田(デジでん)甲子園」で優勝、2023年3月に内閣総理大臣賞を受賞した。

    社会課題の解決を、継続可能なビジネスへ

    地域の小中学生もマップを使い、通学路の危険箇所を調べ、対策を考える学習に取り組んだ。交通安全を学ぶだけでなく、データから地域課題を考える機会にもなった。こうした取り組みはデジタル技術を活用して地域課題の解決に取り組む優れた事例を表彰する令和4年度「冬のDigi田(デジでん)甲子園」で優勝、2023年3月に内閣総理大臣賞を受賞した。

  • 社会課題の解決を、継続可能なビジネスへ

    一つの地域の成果を全国へ広げるには、複数の仕事をつなぐ必要がある。地域の営業店や代理店が自治体の課題を聞き、本社の専門部署がデータを分析する。必要に応じて大学などの外部パートナーが加わり、地域に合う施策を考える。地方創生を担う部署は、福井で得た知見を全国の拠点に共有する。全国に営業拠点と専門人材を持つ保険会社だからこそできる連携だった。

    社会課題への取り組みは、寄付や一時的な支援だけでは長く続かない。民間企業として、継続して関与するためには、地域への貢献を自社の事業の成長にもつなげる必要がある。

  • 今回の例では、走行データを活用した自動車保険が広まれば、分析に使えるデータが増え、地域の安全対策に生かせる。そこで得た成果は、保険が事故後の補償だけではなく、事故予防にも役立つことを示す。営業店や代理店も、その価値を顧客に伝え、保険のさらなる普及につなげられる。

  • 社会課題の解決を、継続可能なビジネスへ

    地域の安全に貢献することで、保険の価値が高まる。保険が広まれば、地域に還元できるデータも増える。さらに、一つの地域で得た成果は、別の地域への提案にも生かせる。この循環をビジネスとして成り立たせることが、地方創生をはじめとする社会課題への取り組みを、一過性で終わらせず、長く続ける力になる。

    自治体の課題を聞く人がいる。データを分析する人がいる。地域の関係者と施策を形にする人がいる。そして、一つの地域で生まれた成果を全国へ届ける人がいる。

    事故後の補償から、事故前の予防へ。保険を販売することから、地域の課題を解決することへ。地方創生の現場は、損害保険会社で働く人の役割を、これまで以上に広げている。

  • 「この10年間で最も大きかったのは、自治体をはじめとする各地のパートナーとの信頼関係を構築してきたことだと思っています。その信頼関係を背景に、交通だけではなく、防災・人口減少・少子高齢化・脱炭素・中小企業支援といった分野まで課題解決の枠を広げています。今後もさまざまなパートナーと一緒に進めていきたいと考えています。」

    鈴木 毅
    鈴木 毅
  • 針木 梢
    針木 梢

    「金融機関だからこそ、自治体や警察だけではなく、地元の代理店さんや、企業、大学、地方銀行、生命保険会社、ディーラーなど、いろいろな方と手を組み、地域を巻き込んで地方創生に取り組める点に面白さを感じています。連携の輪が広がることで、できることの可能性も広がっていくところが魅力だと思っています。」

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